井戸香炉
井戸香炉

利休所持と伝えられる根津美術館所蔵の井戸香炉に銘「此の世」がある。
香炉として造られた井戸焼きがあるとは思えない。なので見立て香炉なのだろう。
高さ7.5センチ、口径7.5センチと小さなものだ。
形はちょうど口縁の反った湯呑み茶碗と思えばいい。
原作国・李朝の人々は何に使ったのだろう。申し訳程度に共蓋が付いている。
香料とか食卓で調味料入れとして使用したのかも知れない。
とても可愛いのに質感はきっぱり井戸をしていて、魚子貫入が見事に景色を作っている。
さーて作者も真似てみた。ちょうどこんな感じの端反り筒小服茶碗をロクロ引きしていたからだ。
そこで作者は本歌を少し変えて口径を小さく壷形に造った。
焼き上がりの高さは本歌とほとんど同じ7.7センチ。蓋を入れると8.5センチ。胴径は7.6センチだ。
利休さんは、どんな風に「此の世」を使ったのかな。
申し分なく鄙びているから、侘び茶にふさわしかったに違いない。