井戸の魚子貫入
井戸の魚子貫入
   
 

今回のご紹介した6月窯出し作品の姉妹品を使用してみたのが上の小井戸茶碗の見込み画像です。以織は所謂「お茶好き」にて、毎食後と言わず、食間もお茶をたくさん飲みます。なので画像の小井戸を湯呑みがわりに一週間使いました。煎茶も抹茶も御飯も、この茶碗でいただきました。その結果の見込み(内側)の変化がこれです。外側はようやく変化の兆しが見えてきた程度です。引き続き使用してみます。

井戸の約束事のひとつに、画像のごとき魚子貫入があります。以織井戸には2タイプのあって、焼き出した時からこの魚子貫入模様が見えるTYPE1と、古作に倣い使用すると魚子貫入が表れるTYPE2があります。今回の6月窯出し作品はTYPE2です。拡大鏡にて釉ガラスの表面を覗くと、魚子貫入化しているのがわかります。ご紹介した大井戸茶碗「薄墨」にも同じく細かな貫入が実は表れています。

貫入とはそもそも素地土と釉薬の縮み率の違いによって起こる現象です。一般に焼成中はどちらも膨張しています。焼成が終わって冷めてきますと、縮んできます。ところが素地土が縮むのをやめても。釉ガラスはなお縮もうとします。しかし素地土が言う事を聞いてくれないものだから、釉ガラスは自身をヒビさせる事で適応します。この縮み率の差によって貫入の大きさや模様が変わります。磁器にいたっては素地土と釉薬との縮み率を揃える事で、貫入の発生を防いでいます。かたや陶器は貫入による経年変化を楽しむ方向にあります。茶の湯の世界では、貫入によって表れた景色を「茶碗が育った」と愛でます。ゆえに貫入の大きさ模様は大切で、「井戸には魚子貫入」という約束事までできました。(h26_6_22)