N氏こと仲森氏
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ことあるごとに幸せな出会いに恵まれてきた以織だ。
N氏も、かけがえのないそのお一人だ。
もっとも、N氏にとってはハチャメチャな窯焚きをする以織に出会ったことが、果たして幸せかどうか。
いつも期待を裏切ってばかりいる。
ともかく今日はうれしい。こうしてN氏のご正体を露にする機会を得たのだから。

N氏のご本名を仲森智博氏という。勢い豊かな、あの題字「以織井戸」を揮毫してくださったその人だ。

西郷との初面談から帰ってきた龍馬に、勝海舟が問う「西郷やいかに?」
龍馬答えて「西郷は小さく叩けば小さく、大きく叩けば大きく鳴る鐘だ」と。
しかして、よく考えるに、鐘は小さき器にあわせて鳴る。
大器が小者の鐘を叩いても小者サイズの音でしか鳴らない。
逆に、小者が大器を叩いても小者サイズの音しかしないのだ。
ということは、以織の叩く「仲森智博」鐘は以織サイズでしか鳴らないことになる。
だから仲森氏について、読者に氏の全容を語ることは以織には出来ない。ご容赦のほど。

二年前、井戸茶碗研究に行き詰まっていた以織に一通のメールが入る。
それが仲森氏との出会いだった。以後、茶陶磁の指南役として仲森氏を師と仰いでいる。
以織とて独学ではあるが、教科書にはないような実験を繰り返している。
そんな以織のオタッキーな質問に対して、仲森氏は一度として答えに窮したことがない。
その示唆にとんだアドバイスで何度救われたことか。

技術の師であるだけでない。茶の湯の人でもある。

茶碗は孤絶して屹立していたいと考えていた以織に、
氏は言う。「足らないことが茶碗なのだ」と。
足らないことで足りていて、未完こそ完成に通ずるということか。

陳腐な表現だが「時代の最先端」を走る人でもある。

むしろ、それが氏の本業。現在、日経BP未来研究所所長の要職にある。
未来研究所と言ってもSFの話ではない。
科学分野での近未来における実現可能な技術情報を統合しているらしい。
「らしい」と書いたのは以織には全く未知の仲森氏がそこにいるから。

こんな人だったんだ!

「高麗茶碗考」を寄稿くださったのを機に、氏に経歴を記してくださるようお願いした。
読んではじめて知ることとなった。
「すごい人」と聞かされてはいたが、とんでもない世界にに住む方だったのだ。
(そんなそぶりも見せなかったなー。)

どうにも和魂洋才の人である。

言葉では聞くものの、その存在は難しいと思っていた。
しかし氏の根っこは「和」で出来ている。
幼年時より書画の修養に励んできたという。
現代稀なる家風によって育まれた氏であるのだ。
以織の想像であり願いでもあるのだが、氏には秘めたプロジェクトがある。
きっとある。
「和」を掬い上げて、「和」を救い上げてくれるに違いない。

「仲森さん、本当にありがとう。」(h26_4_13 以織記)

追記:仲森氏の著作はネット検索すると多数ヒットします。
  以織のおすすめは『技のココロ』と、『思索の副作用』です。
  『技のココロ』は我々ものづくり必読書です。一流工人たちの創意工夫、そして努力の記録です。
  彼らが何故に一流なのか、その所以に納得します。
  と、これは凡人・以織の感想です。仲森氏の狙いはもっと大きな視座で広がっています。
  一方『思索の副作用』はウイットに富んだ現代文明論です。
  氏のアイロニーを交えた表現におもわず含み笑いがもれます。
  それに忘れてはならないのが『FUKUSHIMAレポート』です。
  3.11をうけて氏が立ち上げたプロジェクトチームによるレポートです。
  日本のトップレベルの科学者達が福島原発事故と、
  原発のこれからについて隠し事なくリアルに報告しています。
  いかなる圧力も排除して真実に迫るため、
  氏はこのレポートの発刊を開かれた寄付によって賄いました。
  日本初の実験的プロジェクトです。
  氏の著作はこのお薦め3冊をはじめとして略歴ページにアドレスを掲載しました。